直ぐに平行的に作業してしまう

沢山ある成果物を納期内に作成するためには、各担当者が平行して作業することが有効です。
従って計画を立てているときは、予定されている成果物を納期内に完了させるために平行性を高めて期間を圧縮します。

しかし、そのためには各担当者が作業できるだけの環境が整えられている必要があります。同時に各々の作業が全体として整合していることが必要になります。
ここで言う「環境」とは、成果物を作成する方法を各担当者が理解し、かつ、その成果物を作成出来るだけの知識と情報を集めるための手段が用意されていることを指します。

しかし、多くの場合この環境が整っているかどうかに関係なく、納期の都合だけで平行的に作業している現場を多く見ます。

そこでの関心は成果物ができあがるか否かであり、その中身は無視されるケースがほとんどです。
当然精度が低くていいと考えている訳ではなく、各担当者が個別に精度を上げるように求められます。

しかし、環境が整っていない状況での精度向上は望めません。
精度を上げたくても上げるための情報が欠落しているからです。
つまり精度を上げるためには、曖昧なところを無くし、全体として整合している必要があります。
そのためには各担当毎に考える部分と全体として考える部分がうまく切り分けられている必要があります。

そのためには全体としての方向性や方針が決められており、その方向で各担当者が各部の仕様を決めていくことになります。
方針や方向性が決まると各担当者はその方針や方向に向かって自分の担当分を決めていくことになります。

またその方針や方向性は特定の人で決められるものではなく、合意しながら要件を積み上げて行く中で方向性や方針が定まってきます。

多くの要件定義の現場ではプロジェクト全体としての方向性や方針を決める場も無く、それらを決めるための仕組みも無いため、全体的な決め毎はなおざりになりがちです。
結局個人作業としての精度向上しか目指していないプロジェクトでは結果的に精度の悪いものしかできあがりません。

このようなことがあるので、要件定義工程のはじめの段階では平行的な個人作業をするよりは、メンバーが集まって全体としての方向性や方針、ドキュメントの内容、書き方、粒度など平行作業をするための環境が整うまでメンバーが一緒に作業することが必要です。

そして、その方が個人作業をするようにずっと効率がよく成果も出やすくなります。