システムの外部環境を明らかにする

前回はシステム価値を整理することを説明しましたが、今回はシステムの外部環境を明らかにするところを説明します。

「システム外部環境」の視点はシステムを取り巻く環境を明らかにすることです。

そもそもシステムの機能やデータを明らかにするためには、システム境界が明確でなければなりません。
そして、システム境界を決めるためには、システムがどのように使われるのかが明らかになっている必要があります。

「システム外部環境」の視点は、システムがどのように使われるのかを明らかにし、開発するシステムによって業務がどのようになるのかを考える視点です。
そしてシステム価値であげたシステムの目的や役割を実現するのも、この「システム外部環境」の役目です。
システムを使った業務が何らかの価値を生むことで、システムが役に立ったと考えます。

RDRAではその外部環境を整理するための方法として3つの情報を明らかにすることを提案しています。

 1.業務フロー
 2.利用シーン
 3.概念モデル

上記3つの情報でシステムの外部環境を明らかにします。

1.業務フロー
これは昔から使われているものですから、改めて説明するまでも無いと思いますが、業務の流れを明らかにするものです。
業務フローを作成する時はあくまでも業務がうまく効率的に回るか、関係者の関わり方に無駄はないかなど、業務視点での設計が大事になります。(参照:業務フローは何をフローとして表しているのか http://d.hatena.ne.jp/good_way/20090311/1236777320)
注すべき点としてはシステム化に捕らわれすぎないことが必要です。あくまでも流れとして業務が成立することを重視します。

2.利用シーン
これはツールやユーティリティを開発する場合などのように作業を流れとして表現しにくい場合に用いるもので、システムを利用する場面をシナリオとしてまとめるものです。
この利用シーンの特徴はHappyなシナリオを考えることです。
つまり、どのようにシステムを利用するのかを要件定義チームのメンバーで意識合わせするために利用します。
従って正確に記述することよりもシステムを使うと何が嬉しいのかを明らかにすることが目的です。
ツールやユーティリティプログラムは特定のユーザを持ちません。不特定多数のユーザを相手にすることがほとんどです。
そのため機能は豊富なのだが何が嬉しいのかよく分からない要件になっていることがあります。
そのためにこのソフトを使うと何が嬉しいのかを明らかにすることが重要になります。

3.概念モデル
業務や作業を行う時には必ずある種の概念が存在します。その概念の認識が人によって異なっていると意思疎通がうまく図れません。
また、業務フローや利用シーンの中で使われる言葉のイメージも異なって来ます。
このような概念を明らかにするのが概念モデルです。
概念モデルはオブジェクト指向モデリングテクニックを必要としますので、モデリングに不慣れな場合は用語集として概念を表す言葉を整理します。

上記の3つの情報(業務フローと利用シーンはどちらか片方を利用)を使ってシステムを取り巻く環境を分析し、要件を明らかにします。

当然ここでも徐々に洗練化することが大事ですから、一度に完成させるのではなく、他のモデルを作成しながら、精度を上げていきます。